2011.01.13 第2回アジア保全生態学セミナー

花上に存在する情報を利用したハナバチ類の採餌行動―花資源の有無をどう判断するのか―

 To visit or not: foraging behavior of bees using several cues left on the flower

横井智之(岡山大学 環境学研究科 昆虫生態学研究室

2011年1月13日(木) 15:00〜16:30 理学部3号館5階 生物第2会議室(3521)

多 くの生物にとって,子のための十分な餌資源を集めることは,自らの適応度を上げるうえでも重要となる.ハナバチなどの訪花昆虫にとって,餌資源である花は 野外においてパッチ状に分布しており,さらに花蜜や花粉といった資源量は同じ植物体や植物間でもばらつきを生じ,予測困難な場合が多い.そのためハナバチ 類では,花の資源量を評価するために幾つかの手がかり(cue)を利用している.採餌を行う際には,花自体によって示される場合と訪花者によって花上に残される場合の両方を,状況に応じて判断して利用していると考えられる.これらのcueを利用する採餌行動に関しては社会性ハナバチ種で多くの研究があるが,ハナバチ類全体で包括的に取り扱った研究はない.本講演では,“匂いのマーク”と“他個体の存在”の2つのcueを利用した採餌行動について,社会性・単独性ハナバチの両タイプに着目した研究内容を紹介する.


1)     匂いのマークを用いた採餌行動

先に採餌した個体により花上に残された化学物質を,匂いのマーク (Scent mark) として認識して資源評価に利用する行動に関しては,ミツバチやマルハナバチなどの社会性種,もしくはミツバチ科のみの特性として推測されてきた.本講演では,系統上の分化の違いにより匂いのマーク利用の能力に違いが見られるかを検証するため,4科に属する単独性ハナバチ種と1科の社会性ハナバチ種に着目した.実験結果から,匂いのマークを利用する行動と,社会性の発達やハナバチ類の系統,利用する花の形態といった要因との関係について考察する.


2)     他個体の存在を用いた採餌行動

複数のハナバチ種間で利用する花資源に重複が見られ,さらに訪花個体数が増加する場合であれば,植物体上の同じ花上に2個 体以上が同時訪花するような状況が起こりうる.マルハナバチのような社会性ハナバチ種のみが訪花する条件下では,社会性種が花上の他個体の存在をどのよう な資源情報として利用しているかについて研究がなされてきた.しかし,複数の社会性・単独性種が混在して訪花する資源上で,花上の個体に対して両タイプの ハナバチ種がどのような訪花行動を示すかについては明らかにされていなかった.本講演では,クサイチゴに訪花した2種の単独性ハナバチとセイヨウミツバチを用いた実験結果から,両タイプのハナバチ種における,他個体の存在という情報の利用について考察する.

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