2013.09.30 第7回アジア保全生態学セミナー

「半島マレーシアのフタバガキ熱帯多雨林の森林構造と機能とを対象にした、個体ベースモデルによるシミュレーション研究」

日時:2013年9月30日(月) 13時~15時半

場所:九州大学箱崎キャンパス理学部 生物第一講義室

発表者:佐藤 永 (名古屋大学大学院 環境学研究科 特任准教授)

 本発表では、生物地球化学モデルであるSEIB-DGVM (Sato et al. 2007) をマレーシアのフタバガキ熱帯多雨林に適用し、その遷移パターン、成熟林の構造 (木本のサイズ構造・LAI・バイオマス) 、および機能 (GPP・NPP) を再現させた研究について紹介する。なお、この研究の骨子については、Sato et al. (2009)に報告済みである。SEIB-DGVMは、光合成速度や呼吸速度を、気象要素や大気中CO2分圧の関数として表現する。また、空間構造を明示的に扱った仮想林分に個体として表現された木々を配置し、これら木々が光と空間を巡る局所的な競争を行うといった、より現実に近い植物個体間相互作用を扱っている。これらの特徴により、このモデルは、気候や大気中CO2分圧の変動が、フタバガキ熱帯多雨林の生産速度や個体群動態に与える影響を、定量的に検討する事を可能としている。
 そこで実際に、モデルに入力する気候環境を様々に変化させることで、モデル挙動の感度分析を行った。その結果、ある一定範囲の環境変動は、LAIや木本密度といった森林全体の構造に大きな影響を与えることは無かった。しかし、植物生産速度には大きな影響を与え、より低い気温、より高い放射強度、より高いCO2分圧の元で、生産速度が増大した。また同じ分析からは、樹冠層に優占する樹種の消長が、非優占的で強光要求性な樹種の消長に多大な影響を与えるという結果が得られた。この結果は、環境変動が優占種や森林の全体構造に大きな影響を与えなくても、非優占種における多様性には甚大な影響を与える可能性がある事を示唆するものである。
 なお、時間に余裕があれば、このSEIB-DGVMを用いた最新の研究結果や、またこのような生態系シミュレーション研究の動向についても発表したい。

Sato, H., et al. (2007) . "SEIB-DGVM: A new dynamic global vegetation model using a spatially explicit individual-based approach." Ecological Modelling 200 (3-4) : 279-307.
Sato, H. (2009) . "Simulation of the vegetation structure and function in a Malaysian tropical rain forest using the individual-based dynamic vegetation model SEIB-DGVM." Forest Ecology and Management." Forest Ecology and Management 257: 2277-2286.

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Lina Kawaguchi,
2013/09/13 19:19
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