[教育] [研究と保全] [国際連携]
 
「保全生態学」「生物多様性保全」という社会目標に寄与することを使命として発展した新しい科学です。
その発展初期には、種の保全に対し比重が大きかったのですが、現在では遺伝子・種・生態系の多様性をすべてカバーする学際領域となっています。

本プログラムでは、「生物多様性の損失」を評価するために、森林など多様な生態系の劣化、野生生物種の絶滅、遺伝子多様性の消失に関する複合観測を行い、日本における保全生態学を発展させるとともに、「アジア保全生態学」を発展させて行くことを目的としています。
具体的には、以下の2つの共通課題を設定して、各コアサイト(中国、カンボジア、屋久島、伊都キャンパス、今津干潟)での研究の統合をはかります。

① 生態系・種・遺伝子レベルの多様性をカバーした「全生態系管理技術」の開発
九大新キャンパスの保全緑地、カンボジアの熱帯林、福井県三方湖と中国太湖をモデルとして、遺伝子~生態系をカバーした管理技術を開発します。特に以下の課題を追求していきます。
   1. 大規模森林移植による生態系・種多様性保全効果の検証。
   2. 地下水保全と森林・種多様性再生の両立。
   3. メタゲノム解析による、遺伝子多様性の評価・保全技術の開発。
   4. 水質改善と生物多様性保全・再生を同時に実現する技術開発。
   5. 森林資源利用と生物多様性保全を両立させる順応管理技術の開発。

② 自然再生のための生態・社会系統合科学の発展
国内外の自然再生事業を「実験」とみなし、自然要因と社会要因を説明変数とする統計モデルによって、「どのような条件下で自然再生が成功するか」を解明します。
特に以下の課題に取り組んでいきます。
   1. 国内各地の自然再生事業に対して対策を提示した上での順応管理実験。
   2. 自然要因と社会要因を説明変数とする統計モデルによる、自然再生事業の成功に有意に相関する要因の抽出。
   3. 社会要因と生態系の変化の関係をあらわす統計モデルの開発。
   4. 土地利用などに関する人間の意志決定と生態系の変化を関連づけた動態モデルの開発。

このように、本プログラムでは、九大・東大の連携によって、国内およびアジア諸国における多数の観測サイトのネットワーク化を推進し、遺伝子・種・生態系を網羅する統合観測技術を開発していきます。九大が持つ国際的に卓越した研究基盤である、レッドデータブックに適用できる絶滅リスク評価技術、温暖化の下での熱帯林の変化を予測できる水・炭素循環モデル、人間行動(意思決定)と生態系のフィードバック関係を考慮するモデル、植物・昆虫のデータベースなどを前提に、東大が持つ衛星観測や空間解析における卓越した研究基盤と連携し、ローカルな保全生態学と地球規模での観測科学を結びつける新しい学問分野を開拓していきたいと考えています。そして、世界で最も劇的な変化を遂げているアジア地域を対象に「アジア保全生態学」を開拓し、「地球保全生態学」の発展につなげたいと考えています。

Comments